2005/09/02

黒帯のしお

似という町は立派なラーメン激戦エリア。
「山桜桃」「弟子屈」などの人気店でも知られている場所ですが
一昨年のオープン以来、ネットなどでも評判を呼んでいて
非常に興味を持っていたのが「らぁめん道場黒帯」というお店です。

kuroobi2場所は札幌市北区新琴似6条。
カーナビに住所を入れて辿り着いたら「庭田」という
ラーメン店に連れて行かれてしまいました(^^;
おやおや、と思ってあたりを調べてみると
同じビルにこの「黒帯」も入っているのですね。
表通り沿いに「庭田」、脇の通り沿いに「黒帯」です。
青い大きな垂れ幕に店名が掲げられていて
脇の通りに入れれば絶対に見落としません。
駐車場も道を挟んだ斜向かいに完備しています。

ラーメン店というよりも日本蕎麦屋のような雰囲気の店内には
墨で書かれたお品書きと共に食材表が張られています。
有機丸大豆醤油、道産大豆無添加味噌、内モンゴル天然岩塩
大分県原木椎茸、道産軟白葱、長崎平戸産無添加煮干…
これでもかというくらいこだわりの食材が並びます。
和食の料理店を営んでいた方が開いたお店とのことで
繊細なラーメンが出てくるのではと、期待も高まります。

メニューは「しお」「みそ」「しょうゆ」の他に
平日1日10杯限定の「ぢどりしお」もあります。
残念ながら限定は終売になっていましたので
連れもいたので「しお」と「しょうゆ」を頼んでみました。

kuroobi1出てきたラーメンは期待を裏切らない
上品でお洒落なビジュアルをしていました。
手作り感ある小洒落た器の中にラーメンが入り
小鉢には厚焼き玉子や海苔巻き、漬物が入っています。
和食は器を含めビジュアルに命を懸ける部分がありますが
その「和食魂」がビシビシと感じられるビジュアルです。
もうこの時点でかなり期待値は上がってきます。
やはり食べ物は見た目って重要なんですよねぇ。

スープは白濁した豚骨&鶏といった動物系に
煮干しや昆布などの魚介系旨味が加わっています。
動物系の甘い香りと魚介系のダシの香りに加え
スープに浮かべられた大量の焦がし葱が香ってきます。
さらにそこに燻製されたチャーシューの燻した香り。
とにかく食べる前から香りが次々と攻めてくるのです。

ラーメンに精通されている食べ手の方だと
焦がし葱に燻製チャーシューの香り、
なんて聞くと興ざめしてしまうかも知れません。
しかし、この複数の旨味と香りの要素を
実に上手にまとめ上げているのは立派です。
そして塩味も丸く出ていてバランスが非常にいい。
突出しているモノが一つとしてないにも関わらず
物足りなさを感じさせないのは技術なのでしょう。
醤油も同じくまろやかな味わいになっていて
しつこさは感じず、物足りなさも感じず。
非常に上品でかつ繊細で、深いスープです。

また焦がし葱や揚げ葱というモノは、基本的に否定派なのですが
このスープにおける焦がし葱は、ちゃぶ屋の揚げエシャロット同様に
私的には必須というか、ピッタリといった感じです。
またチャーシューの燻した香りも、このスープに合っています。
麺はさがみ屋の中太縮れ麺で、茹で加減は固めです。
特筆すべき麺ではありませんが、スープをよく拾ってきます。

この味わい、このバランス、このベクトルは
非常に「東京的」な一杯といえます。
新しいというか、今流行のというか。
札幌に今まで無かった、というのも分かります。
琴似で出逢ったラーメンは、しみじみと美味しく
かつ新しい味わいの一杯でした。

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2005/09/01

爐のスペシャル

幌に行く機会が年に数回あります。
そうすると用事がある時以外のフリーな時間帯は
やはりラーメン食べ歩きになるわけで(^^;
千葉以外の地域で一番食べているのは
なんだかんだで札幌かも知れません。

今回も8月31日〜9月2日のスケジュールで
まだ蒸し暑さが残る札幌に行ってきました。
この時期で暑いのは札幌にしては珍しいようで
夜は扇風機のお世話になっている、と現地の方が皆
うんざりしたような顔つきで話されてました。
札幌の一般家庭にはまずクーラーはありませんし
扇風機も夜は滅多に使うことはないそうで。
それほど涼しい気候の札幌でも、今年のこの時期は
未だに暑いんです。やっぱり異常気象なのかしら。

今回はいくつか打ち合わせも入っていたので
ガンガン食べ歩きが出来たかといえばそうでもありません。
一応今回食べた店3日で11軒しか回れませんでした。
11軒も行けば十分か(^^;

【31日】
博多ラーメンばりきや札幌駅店「香りとんこつ醤油」
ラーメン信月「塩ラーメン」
【1日】
あじさい(札幌ら〜めん共和国)「函館塩ラーメン」
とら屋食堂(札幌ら〜めん共和国)「3代目醤油ラーメン」
河むら(札幌ら〜めん共和国)「正油ラーメン」
爐「スペシャルらーめん」
欅「ニンニクらーめん」
【2日】
狼スープ「味噌卵ラーメン」
らぁめん道場黒帯「しおらぁめん」
純連「醤油ラーメン」
すみれ「昔風ラーメン」

irori2今回食べた11軒の中で
一番古いお店は「爐」かも知れません。
以前は北大近くに店を構えていて
北大生に人気があったそうで
昭和26年創業といいますから
かれこれ50年以上の歴史を誇ります。
この店の自慢というか、名物ラーメンは
ご存じ「スペシャルらーめん」です。
他のラーメンが700円という価格の中で
このラーメンだけは1000円という価格。

irori1スープはイカスミかと思わせる色。
これは無精製ラードを強火で焼いて
焦がした時に出る色なのだとか。
熊本ラーメンのマー油などで黒い油は見かけますが
ここまで真っ黒な色のラーメンはなかなかありません。
この黒い油の層の下にスープが隠れています。
味のベースは白濁スープに醤油味なのですが
このラードでイカやツブ貝などを炒めてあるので
スープに魚介類のうま味が溢れています。
このスープの味わいは非常にオリジナリティがあって
それでいてしみじみと旨いんです。
ラードを焦がしたといってもクセはあまり感じませんし
とにかく香りがよくて、ついつい後を引いてしまう。
麺は西山ですが、スープと麺もピッタリ合っています。
スープをたっぷり飲めるように、というわけではないのでしょうが
レンゲではなく大きな金属製のスプーンが付いてきます。

戦後間もなく生まれた店の名物ラーメンは
今もそのレシピと味を変えることなく
札幌の人達に愛されています。
お店の方たちのアットホームな接客も嬉しいです。
駅からも歩いてすぐですし、札幌に行かれた際には
ぜひ体験して欲しいお店です。

【ぐるなび】

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2005/08/31

イレブンで朝ラーメン

馬場にあるラーメン店「イレブンフーズ」。
雑誌にもほとんど登場する機会のないお店ですが
ラーメン好きの方なら誰もが知っているお店ですよね。
もちろん私もラーメンの食べ歩きを始めた頃から
このお店が大好きでよく足を運んでいます。
とは言いながらもなかなか行けないのが実状でして(^^;

というのも、基本的に夜行性で、かつ土日休みの私にとって
朝8時〜夜6時(土曜は朝8時〜昼2時まで)、日曜は休みという
この店の営業形態はなかなか敷居が高いのですね。
平日は昼まで寝てますし(爆)、午後からは千葉で仕事。
午前中に新馬場にいる、なんてことはまぁまずない。
そして夜は深夜まで仕事をしていますので
仕事終わった後はお店も閉まってる。
朝早起きして仕事の前に行けばいいのでしょうが
なかなかそういうわけにも行かず。
食べに行きたいけれどなかなか行けない店、
それがイレブンフーズなのです。

そんな朝が苦手な私ではありますが
年に何度か午前中比較的早い時間に新馬場に行けるチャンスがあります。
それは地方で用事がある際に羽田空港を使う時です。
そういう場合はだいたい午前便に乗ることが多いので、
千葉から湾岸を使って羽田に向かう途中
大井インターで降りればイレブンに向かえます。
そんな黄金ルートに気付いてからは
そうやってイレブンに行く事が増えました。
この日は札幌に行くために午前の便を押さえていましたので
午前10時前にイレブンへ到着しました。
さすがに朝のラッシュは終わり、お昼時間にはまだ早く、
先客は1名というガラ空き状態でラッキーです。

elevenこの店では「チャーシューメン」と
決めている方も多いようですが
そんなにたくさんチャーシューは食べられない(^^;
私がいつも頼むのは「ラーメン」です。
それでも分厚い肩ロース?チャーシューと
崩れた細かいチャーシューが入ってくるので
私的には十分満足出来ちゃいます。

お世辞にも綺麗とは言えない雰囲気の店内で
不機嫌というわけではないのでしょうが
不必要な愛想を持とうとはしないお店の人。
お盆の上にお金を勝手に置いていく支払い方法。
ビミョーなデザインのプラスチックで出来た丼。
ポップアート的なデザインの六角椅子。
2層式の洗濯機で脱水するキクラゲ。
全てがオンリーワンの存在感。
今流行りのラーメン店とは対極にあるお店ですが
その独特な世界観がたまらなく好きなのです。

もちろんその雰囲気だけでなく、ラーメンもたまりません。
豚骨メインのスープには背脂が溶けだしていて
かなり動物系の濃度と粘度を感じます。
と同時に野菜などの旨味も出ている感じです。
もちろん化学調味料も入っていますが
化調がどうのこうの、と言っているのがバカらしくなる。
ラーメンなんて旨ければいいじゃねーか、といった
メッセージを主張しているようなスープです。
日によって濃度や旨味などで若干のブレがありますが、
この日は濃度も油分も出ていて個人的には大満足。

生タマネギの角切りがプカプカと浮いていて
食べている過程で苦みと甘みのアクセントを加えます。
竹岡式のタマネギはその名の通り「薬味」ですが
イレブンのタマネギは立派な「具材」として
立派な存在感を誇示していると思います。
タマネギの食べ方って世の中に色々ありますが
イレブンのこのタマネギはジャンキーですけど
私的にはかなり上位に来る食べ方です。

そして麺は私の大好きな酒井製麺の太麺。
せっかくの美味しい麺を柔々に茹でてるのも
この店だと何故か許せてしまいます(^^;
700円って金額がCP的にどうなのか考えさせる暇もなく
勢いで喰わせてしまう迫力があります。

湾岸道路を千葉から羽田に向かう途中、
葛西にさしかかったあたりで気分はイレブンモードに突入です。
東京港トンネルを通過する時にはもう左車線で流出の準備。
天王洲を超える頃にはもうお腹が鳴っています。
二郎や家系、竹岡式でも感じることなのですが
イレブンのラーメンは代替するラーメンがないんです。
イレブンを食べたくなったらイレブンに行くしかない。
私的にはベスト3に入るラーメンかも知れません。
あぁ、また食べたくなってきた…。

【イレブン@新馬場レポ】

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2005/04/20

博多一風堂、東京進出10周年

多一風堂が恵比寿に店を構えたのが
今からちょうど10年前のこの日、4月20日のことでした。
その前年、新横浜ラーメン博物館に出店もしていましたし
当時ラーメンにさほど興味のなかった私であっても
それなりに店の名前や、ラーメンのことは知っていました。
その後私はラーメンにはまり、ラーメンを食べ歩く生活になる中で
一風堂のラーメンも食べるようになりました。
もちろん最初に食べたのはここ恵比寿店。
それから店主河原成美氏をはじめ、スタッフの皆さんとも
親しくさせていただくようになりました。
あれから10年。長いような短いような10年です。

その東京進出10周年を記念して、関東圏内の一風堂全店で
4/19〜21の3日間「上京10年ありがとうイベント」として
替え玉無料、餃子券配布などの催しが行われました。
そして恵比寿店では特別イベントとして
「Back to the 博多一風堂 恵比寿あの頃」と題し、
10年前の開店当時のレシピ、値段のままでラーメンを提供するという
ラーメンファンのみならずワクワクするようなイベントがありました。
しかも19,20日には店主河原氏自らが厨房に立ち
ラーメンを作ると聞いては、行かないわけにはいきません。
正に記念日であるこの20日に出かけようと、
なんとかスケジュールを調整して、恵比寿に行く時間を確保しました。

あらかじめこの日の夕刻には河原氏が
東京を離れるという予定を伺っていましたので
昼営業の時に顔を出そうと考えていました。
すると博多一風堂関東進出の功労者にして、
今は独立して「麺の坊 砦」店主の中坪氏から連絡が入り
営業時間内だとお客さんが集中してゆっくりと話しも出来ないから
営業前に顔を出しませんか?とのご提案。
そこでこの日の朝10時に伺う約束をして、
営業前の恵比寿店へ差し入れを持って遊びにいきました。

私が着いて程なくして河原氏もお店へ到着。
荷物を置くのもそこそこに再会を喜んで下さって
さっそく立ち話が始まりました。
相変わらず元気がみなぎっているパワフルな人です。
上海でのこと、博多のこと、そして今回の10周年のことなどを
熱く語ってくださいました。
やはり上海での反日運動や、博多の地震のことに関しては
かなり気にされているようでした。
逆に私自身の近況や千葉のラーメンに関しての近況も聞かれ、
あっという間に時間が過ぎていきました。

0420ippudo2河原氏はせっかく早く来たんだから、と
厨房の中に招き入れてくれて、
スープ釜などを見せて下さいました。
大釜で豚頭だけを使って炊きあげた濃厚な白濁スープは
全くといっていいほど臭みがありません。
「昨日のスープの方がワイルドでよかったけどな」と
釜を見つめている河原氏は先ほどまでの表情とは異なり
すでにラーメン職人の鋭い目つきになっていました。

「山ちゃん、今ラーメン作るからそこに座って」
そう言って河原氏は私をカウンターに座らせました。
当然開店前なので、他にお客さんはいません。
カウンターをはさみ、私と河原氏が対峙します。
営業中ではないのに、異様なまでの緊張感が走ります。
そして河原氏自らが麺上げして盛りつけた
「10年前」のラーメンが目の前に置かれました。

ippudoもちろんカリスマ店主自らが目の前で作る、という
この特異なシチュエーションも影響しているでしょう。
だとしても、このラーメンの旨さは文句なしでした。
臭みがまったく感じられない豚骨スープは
濃度もしっかりあって、それでいて口当たりはなめらか。
麺は超極細、切り刃28番の低加水ストレート麺で
もちろん固めに茹で上げられており、
まとめて口の中へと放り込むと
スープを程良くたくわえて、口まで運んでくれます。

0420ippudo3私が黙々と食べている様を、
目の前でじっと河原氏が見つめています。
やだなぁ、すごく食べ辛いなぁ(^^;
すると「替え玉行くか?」といって麺を投入。
替え玉のタイミングを見ていたのですね(笑)
カウンター越しに替え玉をいただきました。
博多ラーメンの場合、替え玉をすると
ぬるかったスープの温度が戻ります。
再び熱々になった丼と向き合って、あっという間に完食。
丼の底まで平らげたのは本当に久しぶりのことでした。
とにかくまったく雑味がないというか、欠点がないというか。
失礼な言い方をすれば、一風堂ってこんなに美味しかったんだと
再確認させる出来映えだったと思います。
現在の赤丸などよりも強烈な存在感を持った一杯でした。

しかしこういう状況下でラーメンを食べた時
食後の感想を問われるのが一番苦手です。
きっと今日も聞かれるんだろうなぁ、と思っていたら
厨房から河原氏が出てきてこう言いました。

「これ、旨いよね」

これはもうラーメンを作り続けてきた人でなければ言えない台詞。
自信がなければ言えない重みのある一言でした。

「久しぶりにこのラーメンを作ったんだけど
自分でも悔しいくらいに美味しかったんだよ。
色々と味を変えたり、見た目を変えたりしてきたけど
10年前の味も悪くなかったんだと確認が出来たよ。
この味を今もう一度出すのも悪くないかもね」と嬉しそうに語る河原氏。
いずれ恵比寿だけは他の店舗とは違って
この原点の味を出す日が来るのかも知れません。

【博多一風堂HP】
【上京10年ありがとうイベント】

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