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2005/01/17

第1話「運命の出逢い」

showersの日、男は渋谷のSHOWER'Sで女を待っていた。
たいていは待たせることが多い男ではあったが、
いつになく早く待ち合わせ場所についたのは
久しぶりの渋谷の街を一人で楽しみたかったからなのかもしれない。
窓の下にはスクランブルを急ぎ足で歩く人の波。
それとは無関係にゆったりと時が流れる店内。

「お待たせ!今日は早いね!」
女は数日前に男と一緒にGAPで買った
赤い毛糸の帽子をかぶってやって来た。
「渋谷なんてあんまり来ないから、出口が分からなかったよ」
確かに渋谷駅から一発で目的の出口に出られる人は
なかなかいないのかもしれない。
幼稚園の頃から東急百貨店のお好み食堂を行きつけにし、
三千里薬品の甘栗を好物にしていた男にとっては
渋谷は庭のようなものだった。
しかし時は流れ、人も変わってしまい
いつしかハチ公の向きまでが変わってしまった。

男と女は店を出た。
夜の渋谷の街を歩き、道玄坂を登る。
男にとっては裏道までも知り尽くした街。
円山町まであと少しだ。

「ねぇ!ここ入ろうよ!」女は急に立ち止まった。
そこは久しく渋谷を訪れていない男にとっては
緑屋があったはずの場所であったが
今はザ・プライムと名前を変えていた。
「このあいだ、テレビでラーメン特集やっててさ、
このビルの中にあるラーメン店が出てたんだよ!食べたいなぁ」

ラ、ラーメン?男は耳を疑った。
男は散々この女に色々な食事をさせてきたはずだった。
時には「ラ・ロシェル」で鉄人の味に酔いしれ
あるいは「ロア・ラ・ブッシュ」でワイングラスを傾けた。
その女が今「ラーメン食べたい」と言ったのか?

そして女に手を引かれ、
男はザ・プライムの中へと
心ならずとも足を踏み入れたのであった。

(第2話に続く)

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