« 生粋の秋刀魚味 | トップページ | 第1話「運命の出逢い」 »

2005/01/11

【なると】

ラーメンの具の一つ。「なると巻き」のこと。
白身魚などを原料とする練り製品。
静岡県特産の蒸し蒲鉾の一種で、
焼津市が圧倒的な生産高を誇る。

かつてはラーメンの具といえば「なると」が定番だったが
ラーメンブームの頃には「幻の具」と呼ばれるようになっていた。

その使用用途は味覚上というよりも視覚的要素が大きく
そのことになると自体がどこか後ろめたささえも感じている。

例えば現在でもなるとを使用しているラーメン店に
その具としての採用理由を尋ねれば、
とりあえず苦笑いを浮かべ「いや、見栄えがね…」などと答え
「彩りっていうかさぁ…」などと味について言及することを避け
誰もなぜか語尾が曖昧になる。

その他の理由としては
「師匠の店も乗せているから…」
「ラーメンといえばなるとでしょ?」
「ただなんとなく」
「なんでだっていいだろっ!」などとしまいには怒られる。
ラーメンになるとを乗せる理由を聞くと
人は決まって平常心ではいられなくなるのだ。

このことからも分かるように、
具は本来味を構成するために存在するのだが
なるとに関しては、味というものに期待されての要請ではない。
決して「うまいから」「味のアクセントとして」などという
味覚上の理由で乗せている店は皆無に等しいことが、なるとの不幸だ。

しかし、いくら幻の具になろうとも
ラーメンのシンボルとしての存在意義は明白である。

雑誌やラーメン本を手がけるデザイナーは
ページ上に嬉々として「なると」を楽しそうに並べ、
ラーメンの絵を子供に描かせれば
ニコニコしながら「なると」を描く。
試しに手元の紙になるとを描いてみて欲しい。
きっと楽しい、ワクワクした、子供に戻った気分になるはずだ。

「必勝軒」(津田沼)では、子供へのサービスとして
なるとをたっぷりと子供用の丼に並べ、人気を呼んでいる。
そう、子供はなるとが好きなのだ。

これほどまでに人々の意識下では愛されていながら
味を期待されていない悲しい食材なると。
ラーメンに乗せてスープと一緒に食べるくらいなら
ワサビ醤油でそのまま食べた方が遥かにうまいなると。
この不幸を救ってやることは出来ないか。

しかし、驚くなかれ「拉通」(稲毛海岸)では
常連の中には「なると増し」をオーダーする人もいるほど
超人気の具がなるとなのである。
その秘密は油。
油を使うことでなるとの味が劇的に広がる。
拉通ではなるとを一度油で素揚げすることで
魚介の風味を引き出すことに成功した。
拉通ではなるともどこか誇らしげに微笑んでいる。

どっちが表か裏か、という問題については
平仮名の「の」の字に模様がなってる方が表。
当然「の」の字に見える方が上、ということでいいだろう。
といいながら、時々自分の連載のラーメン写真で
「の」の字が裏になってたりすると軽く凹む。

私がかなり好きな番組「中井正広のブラックバラエティ」では
石原良純氏が「なると大使」として啓蒙活動に勤しまれている。

ちなみに探偵団のアイドル「なるとちゃん」は
現在音信不通である。

|

« 生粋の秋刀魚味 | トップページ | 第1話「運命の出逢い」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【なると】:

« 生粋の秋刀魚味 | トップページ | 第1話「運命の出逢い」 »